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原状回復トラブルを避けるためのチェックリスト

  • 執筆者の写真: 涼 濱中
    涼 濱中
  • 9月6日
  • 読了時間: 5分

更新日:9月16日

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~専門家が教える、退去時の安心マニュアル~

1. はじめに

賃貸住宅を退去するときに必ず直面するのが「原状回復」という問題です。原状回復とは、借主が借りた部屋を「借りた当時の状態」に戻すことを指します。ただし、この「元の状態に戻す」という表現には大きな誤解があり、全国で原状回復をめぐるトラブルが発生しています。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によれば、原状回復の範囲は借主の故意・過失・善管注意義務違反による損耗や毀損が対象であり、通常の生活で生じる経年劣化や損耗は含まれません。

しかし、実際の現場では

  • 経年劣化なのに請求される

  • 契約書に記載が曖昧

  • 退去立会で突然高額見積りなど、借主側が不利になりやすい事例も少なくありません。

そこで今回は、不動産の専門家として、入居時から退去時までのチェックリストを徹底的に解説し、原状回復トラブルを防ぐ方法をまとめます。


2. 原状回復の基本的な考え方

2-1. 法律上の原則

民法第621条では「賃借物の返還は、契約の内容に従い、賃借物を原状に復する義務」があると定められています。しかし、これは「契約で定めた範囲内」での話であり、無制限に全て元通りにする義務ではありません。

2-2. ガイドラインの基準

国交省ガイドラインでは次のように整理されています。

  • 借主負担

    • 壁に開けたネジ穴(必要以上の大きさや数)

    • 飲み物やタバコによるシミ

    • ペットによる傷や臭い

  • 貸主負担

    • 日光による畳や壁紙の変色

    • 家具設置による床のへこみ

    • 経年劣化による設備の故障

2-3. 契約書の重要性

実務上、最も大切なのは賃貸借契約書重要事項説明書の確認です。特約欄に「退去時には壁紙全面張り替え費用を負担する」などと明記されている場合、その有効性が争われることもありますが、借主の署名・押印があれば原則有効とされやすいです。


3. トラブルを避けるための入居時チェックリスト

原状回復のトラブルは、退去時だけでなく入居時から始まっています。入居初日に確認すべきことを以下にまとめます。

3-1. 室内の現況写真を撮る

  • 玄関、各部屋、壁、床、天井、窓、建具などを全方位撮影

  • 傷・汚れ・シミ・へこみは接写で

  • 日付入り写真を推奨(スマホの設定やカメラアプリで可能)

  • 動画も有効(部屋全体の状態を記録できる)

3-2. 入居時チェックシートの活用

管理会社から渡されることが多い「室内チェックシート」に

  • 傷・汚れの場所

  • 大きさ・程度を記入して提出します。渡されない場合は自分で作成し、控えを残しましょう。

3-3. 契約書・特約の確認

  • 原状回復に関する記載を熟読

  • 特約の範囲が一般的基準より広く設定されていないか確認

  • 不明点は入居前に書面で質問しておく


4. 退去前にやっておくべき準備

4-1. 退去予定日の1~2か月前に連絡

契約書で「退去通知は1か月前まで」などの規定がありますが、できれば2か月前に通知すると立会日程や見積もりの調整がスムーズになります。

4-2. 自分でできる簡易清掃

  • キッチン油汚れの除去

  • 浴室のカビ取り

  • 床の簡単な拭き掃除→ プロ清掃ではないため完璧でなくてもOKですが、見た目がきれいだと借主負担の印象が減ります。

4-3. 契約書と入居時資料の再確認

  • 入居時の写真

  • 室内チェックシート

  • 契約書・特約内容を再度読み込み、請求されそうな項目を予測しておきます。


5. 退去立会での注意点

5-1. その場で承諾しない

立会時に提示された見積りを即承諾する必要はありません。「一度持ち帰って確認します」と伝え、見積書を受け取るだけにしましょう。

5-2. 立会には必ず同席する

代理人に任せると細部の説明が抜け落ちる場合があります。可能な限り本人が立会いましょう。

5-3. 写真とメモで記録

  • 指摘された箇所を写真撮影

  • 見積もりの根拠をメモ

  • 可能であればスマホの録音も活用


6. 請求内容の精査と交渉ポイント

6-1. 請求項目ごとの根拠を確認

  • 張り替える壁紙の面積と単価

  • ハウスクリーニングの範囲

  • 設備交換が必要な理由

6-2. 減価償却の考え方

壁紙は6年、畳は6年、エアコンは6~10年など、ガイドラインで耐用年数が設定されています。経年劣化分は貸主負担となるため、耐用年数を過ぎた設備の交換費用は原則支払う必要がありません。

6-3. 専門家や第三者機関の活用

  • 消費生活センター

  • 不動産適正取引推進機構(RETIO)

  • 弁護士相談(法テラス)


7. 原状回復トラブルを避けるための最終チェックリスト

  1. 入居時に室内全体を写真・動画で記録

  2. 傷・汚れをチェックシートに明記

  3. 契約書・特約内容を理解

  4. 退去前に簡易清掃で印象アップ

  5. 立会には必ず同席し記録を残す

  6. 見積もりは持ち帰って確認

  7. ガイドラインに基づき経年劣化を考慮

  8. 不当請求は第三者機関に相談


8. まとめ

原状回復のトラブルは、借主が「知らなかった」ことで大きな負担を負ってしまうケースがほとんどです。しかし、入居時からの準備、契約内容の把握、退去時の冷静な対応を徹底すれば、多くのトラブルは回避できます。

「退去時に揉めるかどうか」は、入居初日にほぼ決まっている――。この意識を持って、日頃から記録と管理を怠らないことが、安心して賃貸生活を終えるための最大のポイントです。 私たちS&S.Labo株式会社は、宅地建物取引士の専門知識と、東京都内での豊富な取引実績を活かし、皆さんの不動産に関する疑問や不安を解消するお手伝いをしています。契約に関するご相談はもちろん、物件探しから売買・賃貸のサポートまで、幅広く対応しております。

お困りごとがありましたらS&S.Labo株式会社にお問い合わせください。


 
 
 

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