賃貸借と使用貸借、状況に応じた契約の選択
- 涼 濱中
- 6月29日
- 読了時間: 5分

これまで賃貸借と使用貸借の違い、存続期間、賃貸借の終了について見てきましたが、結局のところ、どちらの契約が自分に合っているのでしょうか?これは、貸す側と借りる側のそれぞれの状況や関係性によって大きく異なります。
4-1. 貸す側から見たメリット・デメリット
【賃貸借(貸す側:大家さん)】
メリット:
収益が得られる: 安定的な家賃収入により、資産形成や生活費に充てることができます。
事業性: 不動産経営として、節税効果なども期待できます。
権利の保護: 借地借家法により、賃借人の権利が保護される反面、大家さん側も一定のルールの中で安定した契約を期待できます。
管理の明確化: 契約書で細かくルールを定めることができ、トラブル時の対応も明確化しやすいです。
デメリット:
賃借人保護の厳しさ: 特に建物の賃貸借では、借地借家法による賃借人保護が手厚く、一度貸すと簡単には立ち退かせることができません。
管理の手間: 入居者募集、賃料徴収、修繕対応、トラブル対応など、管理の手間がかかります。
維持費用: 固定資産税や修繕費用など、維持管理費がかかります。
空室リスク: 入居者がいない期間は家賃収入が途絶えます。
【使用貸借(貸す側:貸主)】
メリット:
好意に基づいた貸し借り: 親族や友人など、特定の人に限定して便宜を図ることができます。
管理の手間が少ない: 賃料の徴収や賃貸借契約特有の管理は基本的に不要です。
比較的柔軟な終了: 賃貸借に比べて、貸主の都合で終了させやすい側面があります。
デメリット:
収益がない: 無償なので当然ながら収益はありません。
トラブルのリスク: 「好意」で貸しているだけに、万が一トラブルになった際に感情的なこじれが生じやすいです。
維持費の負担: 賃料がないにもかかわらず、固定資産税や修繕費用は貸主が負担することになります。
法的な位置づけの曖昧さ: 賃貸借に比べて判例が少なく、トラブル時の解決が難航することもあります。
4-2. 借りる側から見たメリット・デメリット
【賃貸借(借りる側:入居者)】
メリット:
居住の安定性: 借地借家法により、賃借人の権利が手厚く保護されており、正当な理由なく立ち退きを要求されることはほとんどありません。
住み替えの自由度: 期間満了時や解約予告期間を守れば、比較的自由に住み替えることができます。
初期費用のみ: 購入に比べて初期費用が抑えられます。
修繕義務の負担が少ない: 通常の消耗による修繕は賃貸人(大家さん)が行います。
デメリット:
家賃の支払い: 毎月家賃を支払う必要があります。
原状回復義務: 退去時に借りた時と同じ状態に戻す(原状回復)義務があり、その費用を負担することがあります。
自分の資産にならない: どんなに長く住んでも、自分の資産にはなりません。
契約更新の手間・費用: 契約更新の際に更新料や更新事務手数料がかかることがあります。
【使用貸借(借りる側:借主)】
メリット:
家賃がかからない: 最大のメリットは、賃料の支払いがないことです。
初期費用が少ない: 敷金・礼金といった初期費用がかからないことが多いです。
デメリット:
居住の不安定性: 貸主の都合で、いつでも返還を求められる可能性があります。特に期間の定めがない場合は非常に不安定です。
自己負担が多い: 修繕費や固定資産税などの負担について、契約で明確に定められていないとトラブルになりやすいです。場合によっては、修繕義務を負うこともあります。
法的な保護が手薄: 賃貸借契約のように借地借家法の保護がないため、万が一のトラブルの際に、賃借人のような強い権利主張が難しい場合があります。
4-3. 傾向とアドバイス
東京都では住居確保の重要性から、賃貸借契約が非常に主流です。特に居住用物件においては、借地借家法による借り主保護が強く、多くの人が安心して賃貸物件を利用しています。
一方で、親族間や親しい友人間の「家賃はいらないから使っていいよ」という口約束で、使用貸借が成立しているケースも散見されます。しかし、後々トラブルになることが多いのも事実です。
【注意点】
相続時のトラブル: 親が子に家を無償で貸していた場合、親が亡くなり、その家が複数の兄弟姉妹で相続されることになった際、「なぜ兄(弟)だけタダで住んでいるんだ」というトラブルに発展することがあります。
貸主の状況変化: 貸主が経済的に困窮したり、急遽その土地や建物が必要になったりした場合、借主は急な立ち退きを迫られることがあります。
【そんなときはS&S.Labo株式会社にご相談ください】
契約書をしっかり作成する: 賃貸借、使用貸借のどちらの契約であっても、必ず契約書を作成しましょう。口約束は後々のトラブルの元です。特に使用貸借の場合、「いつまで借りられるのか」「修繕費用は誰が負担するのか」といった点を明確に定めておくことが重要です。
不明な点は専門家に相談する: 賃貸借契約、使用貸借契約は、それぞれ法的な解釈が複雑な場合があります。契約内容に不安がある場合は、宅地建物取引士や弁護士などの専門家に相談しましょう。特に高額な不動産が関わる場合は、事前の確認が不可欠です。
「正当事由」の理解: 賃貸借契約の終了に関する「正当事由」は、一般の方には分かりにくい概念かもしれません。しかし、自分の住まいを守る上で非常に重要な知識です。もし大家さんから立ち退きを求められたら、安易に応じず、まずは専門家に相談することをおすすめします。東京都の弁護士会などでも無料相談を受け付けている場合があります。







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