連帯債務・連帯債権って何?不動産取引を安心させる知識!(1)
- 涼 濱中
- 5月30日
- 読了時間: 12分

皆さん、こんにちは!S&S.Labo株式会社です。
不動産の購入や売却、賃貸契約など、人生で何度か経験するであろう不動産取引。しかし、その中には聞き慣れない専門用語がたくさん出てきますよね。「連帯債務」や「連帯債権」もその一つではないでしょうか?
「なんだか難しそう…」「自分には関係ないかな?」と思われがちですが、実はこれらの概念は、皆さんの大切な財産を守る上で非常に重要な役割を果たすんです。特に、共同で不動産を購入する場合や、複数人で賃貸物件を借りる場合などには、その意味をしっかり理解しておくことが不可欠となります。
そこで今回は、宅地建物取引士として、一般消費者の皆さんにも分かりやすく「連帯債務」と「連帯債権」について解説していきたいと思います。専門用語を並べ立てるだけでなく、具体的な事例も交えながら、皆さんの疑問を解消できるよう努めますので、ぜひ最後までお付き合いください。
そもそも「債務」と「債権」って何?
まずは基本の「債務」と「債権」から確認していきましょう。
債務(さいむ)とは、「〇〇をしなければならない義務」のことです。
例えば、お金を借りたら「返す義務」がありますよね?これが債務です。
債権(さいけん)こちらは反対に、「〇〇を請求できる権利」のことです。お金を貸したら「返してもらう権利」があります。これが債権です。
つまり、債務者(義務を負う人)と債権者(権利を持つ人)という関係性が常に存在するわけです。不動産取引で考えてみましょう。
不動産売買契約の場合
買主は、売主に対して「代金を支払う債務」を負い、同時に「不動産を引き渡してもらう債権」を持ちます。
売主は、買主に対して「不動産を引き渡す債務」を負い、同時に「代金を支払ってもらう債権」を持ちます。
賃貸借契約の場合
賃借人(借りる人)は、賃貸人(貸す人)に対して「家賃を支払う債務」を負い、同時に「部屋を使用する債権」を持ちます。
賃貸人(貸す人)は、賃借人(借りる人)に対して「部屋を使用させる債務」を負い、同時に「家賃を支払ってもらう債権」を持ちます。
このように、私たちの日常生活や不動産取引には、常に債務と債権が存在していることが分かります。
「連帯債務」ってどういうこと?~共同でローンを組む場合を例に
さあ、いよいよ本題の「連帯債務」です。これは特に、夫婦や親子で不動産を購入し、共同で住宅ローンを組む場合などに非常に重要になります。
連帯債務(れんたいさいむ)複数の人が同じ債務について、「連帯して責任を負う」ことを言います。簡単に言うと、「誰か一人に請求してもいいし、全員に請求してもいいし、とにかく債務の全額について、それぞれが責任を負う」という状態です。
これだけだとまだピンと来ないかもしれません。具体的な事例で見ていきましょう。
事例1:夫婦で住宅ローンを組むケース(あくまで想像の事例です)
東京都〇〇区にお住まいのAさんご夫婦が、5,000万円のマンションを購入することになりました。頭金を差し引いた4,000万円を住宅ローンで借り入れることになり、ご夫婦で
「連帯債務者」としてローン契約を結びました。
この場合、銀行(債権者)から見ると、Aさん(夫)もAさん(妻)も、それぞれが「4,000万円全額」について返済義務を負っている、ということになります。
もし夫がローンを支払えなくなったら?
通常であれば、夫が支払えなくなったら、妻は自分の負担分だけを支払えばいい、と考えるかもしれません。しかし、連帯債務の場合、妻は夫の支払い分も含めて、残りの4,000万円全額について返済義務を負うことになります。銀行は妻に対して、夫の未払い分も含めて全額の返済を請求できるのです。
ではどちらか一方が亡くなった場合は?
通常、住宅ローンには団体信用生命保険(団信)が付帯していることが多く、債務者が死亡した場合は、保険金で残りのローンが完済されるのが一般的です。しかし、連帯債務の場合、団信の加入方法によっては、死亡した債務者の負担分だけが完済され、残された債務者の負担分はそのまま残るケースもあります。最近は、夫婦連生団信など、夫婦どちらかが亡くなってもローンが完済されるタイプの保険もありますが、契約内容をしっかり確認することが重要です。
このように、連帯債務は「互いが互いの保証人になっているような状態」と考えると分かりやすいかもしれません。もちろん、お互いに信頼し合っているからこそ連帯債務者となるわけですが、万が一の事態に備えて、その責任の重さを理解しておく必要があります。
連帯債務のメリット・デメリット
メリット
ローン審査に有利になることがある:夫婦など二人の収入を合算することで、借り入れられる金額が増えたり、審査に通りやすくなったりする場合があります。特に東京都のような不動産価格が高い地域では、一人では希望の物件に手が届かない場合に有効な手段です。
住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられる場合がある:条件を満たせば、夫婦それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられるため、節税効果が期待できます。
デメリット
一人当たりの責任が重くなる:上記で説明したように、どちらか一方が支払えなくなった場合、もう一方が全額の責任を負うことになります。
トラブル発生時の負担が大きい:離婚などで関係性が悪化した際に、ローンの返済や不動産の処分を巡ってトラブルになるケースがあります。
連帯債務と「連帯保証」の違い
よく混同されがちなのが「連帯保証」です。
連帯保証(れんたいほしょう):主たる債務者(借りた本人)が債務を履行しない場合に、その債務を履行する責任を負う保証人です。
似ているようで、実は大きな違いがあります。
連帯債務者:主たる債務者と同等の立場で、最初から全額の債務を負います。
連帯保証人:あくまで主たる債務者が支払えない場合に、その責任を負います。
つまり、連帯債務者は債権者から「あなたも借りた本人」と見なされるのに対し、連帯保証人は「借りた人が支払えない時に、代わりに支払う人」と見なされます。
しかし、実際の効果としては、連帯保証人も連帯債務者も、債権者からの請求に対して拒否できる権利が非常に限定的であり(「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」が連帯保証人にはない)、実質的には債務の全額について責任を負うことになります。特に、不動産取引における連帯保証は、非常に重い責任を伴うため、安易に引き受けるべきではありません。
「連帯債権」ってどういうこと?~共同で物件を貸す場合を例に~
次に、「連帯債権」について見ていきましょう。こちらは、あまり耳にすることがないかもしれませんが、例えば、複数の人が共同で不動産を所有し、それを賃貸に出すような場合に登場することがあります。
連帯債権(れんたいさいけん):複数の人が同じ債権について、「連帯して権利を持つ」ことを言います。簡単に言うと、「債務者は、誰か一人に全額を支払えば、他の債権者に対しても支払ったことになる」という状態です。
これも具体的な事例で見ていきましょう。
事例2:兄弟で共有している物件を賃貸に出すケース(あくまで想像の事例です)
東京都〇〇区にご両親から相続したマンションがあり、Bさん(兄)とCさん(弟)が共有名義(それぞれ2分の1ずつ)で所有しているとします。このマンションを賃貸に出すことになり、賃借人から毎月15万円の家賃を受け取ることになりました。
この場合、Bさん兄弟が「連帯債権者」となる契約を結ぶと、賃借人から見ると、Bさん(兄)に対しても、Cさん(弟)に対しても、どちらか一方に15万円の家賃を支払えば、それで支払いは完了したことになります。
賃借人がBさん(兄)に全額支払ったら?
賃借人は、Bさん(兄)に15万円の家賃を支払えば、Cさん(弟)に対して別途支払いをする必要はありません。Cさん(弟)は、Bさん(兄)から自分の取り分(7万5千円)を受け取ることになります。
どちらか一方がお金を受け取ってくれない場合は?
例えば、Bさん兄弟の関係が悪化し、Cさん(弟)が受け取りを拒否した場合でも、賃借人はBさん(兄)に支払いをすれば債務を免れます。
連帯債権のメリット・デメリット
メリット
債務者(賃借人)の利便性が高い:誰か一人に支払えば良いので、手続きが簡素化されます。
債権者間の調整がスムーズになる場合がある:例えば、一人が代表して家賃を受け取り、後で他の共有者と分配する、といった運用が可能です。
デメリット
債権者間でのトラブルの元になることがある:上記の例で言えば、Bさん(兄)が受け取った家賃をCさん(弟)に分配しない、といったトラブルが発生する可能性があります。
債権の一方的な放棄や権利行使のリスク:債権者の一人が勝手に債務を免除したり、返済期限を延ばしたりするなどの行為をしてしまうと、他の債権者の権利に影響を与える可能性があります。
連帯債権は、一般的な不動産取引ではあまり目にすることはありませんが、共有名義の不動産を扱う際には、その概念を理解しておくことが重要です。
連帯債務・連帯債権の実情と注意点
不動産取引における連帯債務・連帯債権の実情と、皆さんに特に注意していただきたい点についてお話しします。
1. 住宅ローンの連帯債務は一般的
東京都は全国的に見ても不動産価格が高く、単独で住宅ローンを組むのが難しいケースも少なくありません。そのため、夫婦や親子で収入を合算し、連帯債務者として住宅ローンを組むのはごく一般的なことです。
しかし、その一方で、連帯債務者となることの責任の重さを十分に理解していない方が多いのも事実です。
「夫が会社を辞めたら、妻が全額払うことになるの!?」
「離婚したら、このローンはどうなるの!?」
といった相談を受けることも少なくありません。契約時には、金融機関や不動産会社から十分に説明を受けるとともに、自分たちでも連帯債務のリスクと責任についてしっかり認識しておくことが重要です。
ポイント:
契約書の内容を熟読する:特に、連帯債務に関する条項や、団信の加入状況、万が一の際の取り決めなどを確認しましょう。
夫婦間のコミュニケーションを密にする:収入の変動や、将来設計など、お互いの状況を共有し、リスクを分担する意識を持つことが大切です。
必要であれば専門家へ相談する:弁護士や税理士など、それぞれの専門家へ相談することで、より具体的なアドバイスを得られるでしょう。
2. 賃貸借契約における「連帯保証人」の重要性
東京都の賃貸物件の契約では、原則として「連帯保証人」を立てるか、「保証会社」を利用することが一般的です。特に学生や新社会人の方などで、親御さんが連帯保証人になるケースは非常に多いです。
前述の通り、連帯保証人は「主たる債務者(借りる人)が支払えない場合に、代わりに支払う人」という、非常に重い責任を負います。家賃滞納や、退去時の原状回復費用、損害賠償など、賃借人が支払うべき費用全般について責任を負うことになります。
東京都の賃貸物件における注意点:
高額な家賃によるリスク:東京都心部の家賃は全国的に見ても高額です。家賃滞納が続けば、連帯保証人が負担する金額も大きくなります。
保証会社の利用:最近では、連帯保証人の代わりに保証会社を利用するケースが増えています。保証会社に保証料を支払うことで、万が一の家賃滞納時に保証会社が大家さんに立て替えて支払ってくれる仕組みです。しかし、保証会社が立て替えた分は、最終的には賃借人や連帯保証人に請求されます。
安易な連帯保証は避ける:親しい友人や知人に「保証人になってほしい」と頼まれることもあるかもしれませんが、その責任の重さを十分に理解し、安易に引き受けないようにしましょう。
3. 共有名義不動産と連帯債権
相続などで複数の人が共有名義で不動産を所有するケースは、東京都でも珍しくありません。このような共有名義の不動産を賃貸に出す場合、家賃債権は「連帯債権」となることがあります。
前述の通り、連帯債権では、債務者(賃借人)は誰か一人の共有者に全額を支払えば、それで債務を免れることができます。しかし、これにより、共有者間での金銭トラブルに発展する可能性も孕んでいます。
共有名義不動産における注意点:
共有者間の取り決めを明確にする:家賃の分配方法、修繕費の負担、管理の責任など、共有者間で詳細な取り決めを文書にしておくことが非常に重要です。
「共有物分割請求」のリスク:共有者のうち一人が「共有物分割請求」を行い、他の共有者の同意なしに裁判所に分割を求めることも可能です。これにより、不動産の売却を余儀なくされる可能性もあります。
不動産管理会社の利用:共有者間のトラブルを避けるためにも、不動産管理会社に一任して家賃の回収や物件の管理を行ってもらうのも一つの方法です。
4. 不動産取引における「契約の自由」と「説明義務」
日本の民法では「契約自由の原則」があり、当事者間で合意すれば様々な内容の契約を結ぶことができます。しかし、不動産取引においては、その専門性の高さや、一般消費者の知識不足からくる不利益を防止するため、宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者(宅建士)には「重要事項説明義務」が課せられています。
連帯債務や連帯保証についても、契約の重要な要素であるため、宅建士は皆さんにその内容を十分に説明する義務があります。
重要事項説明で確認すべき点:
契約の当事者:誰が債務者となり、誰が債権者となるのか。
連帯債務・連帯保証の有無:その内容と責任の範囲。
特約事項:通常の契約とは異なる特別な取り決めがないか。
もし、重要事項説明を受けても疑問点や不明な点があれば、遠慮なく質問しましょう。曖昧なまま契約を進めるのは、後々のトラブルの元となります。
まとめ:連帯債務・連帯債権はあなたの財産を守るための知識
今回は、「連帯債務」と「連帯債権」について、解説してきました。
連帯債務:複数の人が共同で債務を負い、それぞれが全額について責任を負うこと。特に住宅ローンでは、夫婦や親子で連帯債務者となるケースが多く、万が一の事態に備え、その責任の重さを理解しておくことが重要です。
連帯債権:複数の人が共同で債権を持ち、債務者は誰か一人に全額を支払えば債務を免れること。共有名義の不動産を賃貸に出す場合に登場し、共有者間での取り決めが重要になります。
これらの概念は、一見すると難解に思えるかもしれませんが、皆さんの大切な財産を守る上で、非常に重要な知識となります。特に不動産取引は高額な買い物であり、一度契約を結んでしまうと、後から修正するのは非常に困難です。
もし、今回のブログを読んで、連帯債務や連帯債権についてさらに疑問が深まった方、ご自身のケースでどうなるのか不安に感じている方がいらっしゃいましたら、ぜひ専門家である宅地建物取引士にご相談ください。
私たちは、皆さんの不動産取引が安心・安全に進むよう、きめ細やかなサポートを提供しています。豊富な経験と知識を活かし、皆さんの疑問や不安に寄り添い、最適なアドバイスをさせていただきます。
不動産に関するお困りごとがありましたらS&S.Labo株式会社にお問い合わせください。
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