マンション購入で後悔しないために!
- 涼 濱中
- 8月2日
- 読了時間: 7分

不動産取得税の計算と軽減措置を解説
マンションや一戸建ての不動産を購入した際にかかる税金は、固定資産税や都市計画税だけではありません。「不動産取得税」もその一つです。この税金は、取得後しばらくしてから納税通知書が届くため、「忘れていた!」と慌てる方も少なくありません。
特にマンションなどの区分所有物件は、一戸建てとは少し計算方法が異なります。土地と建物を合わせた評価額や、適用される軽減措置を正しく理解していないと、予想外の出費で家計が苦しくなってしまう可能性も。
この記事では、区分所有建物の不動産取得税について、計算方法から軽減措置、申告方法まで、初心者でも分かりやすく解説します。この記事を読めば、マンション購入時の税金に関する不安を解消し、安心して手続きを進められるようになるでしょう。
1. 不動産取得税とは?まずは基本を知ろう
不動産取得税は、土地や家屋などの不動産を取得した際に、その不動産が所在する都道府県から一度だけ課される地方税です。売買はもちろん、贈与や新築・増築によって不動産を取得した場合も課税対象となります。
この税金は、実際の購入価格ではなく、「固定資産税評価額」を基に計算されるのが大きな特徴です。固定資産税評価額は、一般的に市場価格の約70%程度といわれています。
不動産取得税の基本的な計算式は以下の通りです。
不動産取得税=課税標準額×税率
このシンプルな計算式ですが、特にマンションなどの区分所有物件では、「課税標準額」や「税率」に適用されるさまざまな特例措置を理解することが重要になります。
2. 区分所有物件の計算に必要な4つの情報
マンションの不動産取得税を計算するためには、一戸建ての物件よりも少し複雑な情報を集める必要があります。特に重要な4つのポイントを見ていきましょう。
① 固定資産税評価額(建物と土地)
計算の基礎となるのが、この「固定資産税評価額」です。区分所有物件では、建物(家屋)と土地を分けて考えます。
建物の評価額: あなたが所有する専有部分(部屋)だけでなく、エントランスや廊下、エレベーターといった共有部分も、あなたの持分割合に応じて評価額に加算されます。
土地の評価額: マンション敷地全体の評価額を、あなたの所有する「敷地権の持分割合」で按分したものが、あなたの土地部分の評価額となります。
これらの評価額は、購入した翌年度に届く**「固定資産税・都市計画税の納税通知書」**に記載されています。手元にない場合は、市区町村の固定資産税課などで確認できます。
② 床面積
不動産取得税の軽減措置を受けるためには、床面積の要件を満たす必要があります。
床面積: 50m$^2以上240m^2$以下であること
この床面積は、登記簿謄本に記載されている「内法面積」が基準となります。この条件を満たさない場合は、軽減措置が適用されないため、税額が大きく跳ね上がってしまいます。
③ 取得した物件の種別と築年数
物件が新築か中古かによって、適用される軽減措置が異なります。
新築住宅: 床面積の要件を満たせば、建物の課税標準から**1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)**の控除が受けられます。土地にも軽減措置が適用されます。
中古住宅: 新築同様、床面積の要件に加え、「一定の耐震基準」を満たしている必要があります。具体的には、昭和57年1月1日以降に新築された物件であること、または新耐震基準適合証明書があることなどが条件です。これらの要件を満たせば、新築と同様の控除が受けられます。
④ 取得した物件の用途
軽減措置は、あなたが購入したマンションを「自己の居住用」に使う場合にのみ適用されます。投資用やセカンドハウスとして購入した場合は、原則として軽減措置は受けられません。
3. 区分所有物件の不動産取得税を計算してみよう
それでは、実際のケースを想定して不動産取得税を計算してみましょう。
シミュレーション例:新築マンションの場合
物件情報
新築マンション
建物の固定資産税評価額: 2,500万円
専有部分の床面積: 70㎡(※50㎡~240㎡の要件を満たす)
土地全体の固定資産税評価額: 1億5,000万円
敷地権の持分割合: 100,000分の1,200
用途: 自己居住用
ステップ1:建物の不動産取得税を計算する
まずは建物の課税標準額を算出します。新築住宅の軽減措置として、評価額から1,200万円を控除します。
建物の課税標準額 2,500万円(評価額) - 1,200万円(控除額) = 1,300万円
この課税標準額に、住宅用の税率3%をかけます。
建物の不動産取得税 1,300万円 × 3% = 39万円
ステップ2:土地の不動産取得税を計算する
次に土地の税額を計算します。土地は計算方法が少し複雑なので、丁寧に見ていきましょう。
まずは土地の課税標準額を算出します。土地には特例措置として、評価額を2分の1に減額する措置が適用されます(令和9年3月31日まで)。
土地の課税標準額 1億5,000万円(土地全体の評価額) × 100,000分の1,200(持分割合) × 1/2 = 90万円
この課税標準額に、土地の税率3%をかけます。
土地の不動産取得税(軽減前) 90万円 × 3% = 2万7,000円
ステップ3:土地の軽減措置を適用する
土地には、さらに以下のいずれか高い方の金額が税額から控除されます。
4万5,000円
(土地1㎡あたりの固定資産税評価額×1/2)×(住宅の床面積の2倍※200㎡が上限) × 3%
まずは2の金額を計算してみましょう。
土地1㎡あたりの評価額 1億5,000万円 ÷ 10,000㎡(土地全体面積を仮定)= 15,000円
住宅の床面積の2倍 70㎡ × 2 = 140㎡(※200㎡の上限以下)
これらを代入して計算します。
土地の軽減額 (15,000円 × 1/2) × 140㎡ × 3% = 3万1,500円
この金額と、4万5,000円を比較すると、4万5,000円の方が高いため、こちらが適用されます。
最終的な土地の不動産取得税 2万7,000円(軽減前税額) - 4万5,000円(軽減額) = -1万8,000円
この場合、土地の不動産取得税は0円となります。
ステップ4:合計の税額を算出する
最後に、建物と土地の税額を合計します。
合計の不動産取得税 39万円(建物) + 0円(土地) = 39万円
このシミュレーション例では、建物の軽減措置と土地の軽減措置を最大限に活用することで、税負担が大幅に抑えられることが分かります。
4. 中古マンションの場合の注意点
中古マンションの場合、新築物件にはない注意点があります。
昭和57年1月1日以降に新築されたか?
中古住宅の軽減措置を受けるには、昭和57年1月1日以降に新築された住宅であること、または新耐震基準適合証明書などで耐震基準を満たしていることが条件になります。この基準を満たさない場合、軽減措置は受けられず、不動産取得税が大幅に高くなるため注意が必要です。
控除額が異なる場合がある
中古住宅の軽減措置では、建物の新築された時期によって控除額が変わる場合があります。
昭和57年1月1日~平成元年3月31日: 1,000万円控除
平成元年4月1日~平成9年3月31日: 1,200万円控除
購入前に、建築された時期を正確に確認しておくことが大切です。
5. 不動産取得税の申告と納税の流れ
不動産取得税は、取得した不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所に申告し、納税します。
取得後、早めに申告する 不動産を取得したら、原則として取得日から60日以内(都道府県によって異なる)に、管轄の税事務所に「不動産取得税申告書」を提出する必要があります。この申告をすることで、軽減措置が適用され、正しい税額が計算されます。
納税通知書が届く 申告後、数ヶ月ほど経つと、税事務所から納税通知書と納付書が届きます。軽減措置が適用されているか、金額に間違いがないか、必ず確認しましょう。
金融機関などで納税する 通知書に記載されている納付期限までに、金融機関やコンビニエンスストアなどで納税します。クレジットカード払いに対応している自治体もあります。
重要: 軽減措置は自動的に適用されるわけではありません。必ず申告手続きを行う必要があります。申告を忘れてしまうと、軽減前の高額な税金を納めることになってしまうため、注意が必要です。
6. まとめ:不動産取得税の計算は「事前確認」が鍵
マンションなどの区分所有物件の不動産取得税は、一戸建て同様に「建物」と「土地」を分けて計算します。特に重要なのは、以下のポイントを事前に確認しておくことです。
固定資産税評価額: 購入予定の物件の評価額を把握する。
床面積: 専有部分の床面積が軽減措置の要件を満たしているか確認する。
築年数・用途: 中古物件の場合は、耐震基準や自己居住用であるかの要件を満たすか確認する。
敷地権の持分割合: 土地の税額計算に必要となるため、正確な割合を把握しておく。
不動産取得税は、購入価格によっては数十万円単位の出費となることもあります。しかし、正しい知識を持って計算方法や軽減措置を理解しておけば、税額を正確に把握し、安心してマンション購入を進められます。
不明な点があれば、ぜひS&S.Labo株式会社へお電話下さい。
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